Sato Wind Pants レビュー

Emma Nakajimaさん

以前ご本人にもネイバーズページに登場いただきましたEmmaさん。Sato Wind Pantを色々なシーンで使ってくれています。シーンごとの使い方やレビューをまとめてくれました。


正直いうともうだいぶくたびれている。履きすぎだ。岩がゴロつく山の稜線でだって履くし、荷物を積んで旅するバイクパッキングでも、高温多湿の東南アジア遠征にも、泥まみれになるような雨あがりの日も、三日三晩寝られないようなハードな取材の時でも履いているし、世界中を一緒に旅しているもんだから、もしかするとこれがわたしのトレードマークのようなものになっているかもしれない。


山では3通りの使い方をする。爽やかな春〜秋のハイキングならこれ1枚で快適に歩ける。無意識だけど、どちらかというとゆるっとハイキングの時に選んでいる気がする。バリバリのトレランスタイルじゃない、友達とのおしゃべりやティータイム、景色や花を楽しみたい時。軽い生地がさらりと涼しくて心地いい。とにかくなにも履いていないくらいの感覚といっても大袈裟でない。ただしとにかく薄いので、岩や枝の引っ掛けにはくれぐれも注意する必要がある。実際、3箇所くらい穴が空いているがそれでも補修して履いている(穴が空いても気にせず履いていたが、おしり見えてるよと指摘されて修理した)。

 2つめは、ウィンドパンツとして使う時。たいてい汗まみれになる取り付きではショートパンツで歩き出し、稜線で冷たい風が肌に当たって冷えそうだと感じれば上から履いて風を防ぐ。雨が降っていればレインパンツでいいけれど、そうでない時にはレインパンツは蒸れるし張りつくし動きにくい。できるだけ煩わしいものは避けて、軽快なものを身につけたい。もも周りにゆとりがあるシルエットだから、ショートパンツに重ね着しても違和感がない。ゴムのリブがちょっと嵩張るし、よりコンパクトなウィンドパンツもあってトレイルレースではそれを使うけれど、ハイキングの時くらい見た目だって大事にしたいんだ。

 3つめは、小屋やテント場での着替え&下山着として。汗だくで歩いたあと、できればそのままでなく着替えたいわたし。それにリラックスできる格好がいい。そういう時にまさにうってつけ。パンツの下に厚手のタイツだって履ける。下山後のお風呂上がりにも締め付けがなくゆったり着られて、肌触りといいゆとりといい、とにかく爽快なのだ。


長距離バイクパッキングでは、中にパットの入ったショーツを履いている。他人から見ても股やお尻のパッドがわからないくらい腰や腿周りがもたつかず、そのまま街を歩いたって普段着と何ら変わらないところがいい。どうしてもピタピタなウエアがこっぱずかしいし、バイク旅では船に乗ったりキャンプしたりゲストハウスに泊まったりするから、このくらいが気分なのだ。

 初夏の北海道でバイク旅をした時にはこれ1枚で4日間を過ごした。家から履いて飛行機に乗り、札幌ではオシャレなカレー屋さんでオシャレな友人たちとディナー。都会の夜の街をそのまま闊歩したって違和感はないはず。バイク旅がはじまると蒸し暑くて汗びっしょり。でも、バイクに乗って風を切って走るとちょうどよかったりする。夕方前まで漕ぎ、温泉に入ってキャンプ場にピットイン。虫に刺されたくないキャンプ場滞在でも肌を出さずまま涼しく過ごせるパンツは活躍してくれた。さすがにちょっと辛いなと感じたのは雨に降られた時だ。土砂降りの中漕いでいると薄い生地はまたたく間にびしょ濡れになり、肌にピッタリ貼り付いてしまった。上に着ていたシャツも同様で、まるで全身タイツ状態。峠のど真ん中で熊の気配くらいしかなく、誰に見られるわけでもなくギリギリセーフ。これは薄い生地のサガかもしれない。幸いにもその後、雨雲から逃げ出すことができ、走り続けているといつの間にかまたもとのさらさら生地に戻っていた。すごいなと思うのは、速乾性もさることながら、乾いた後の「何事もなかったような顔をしている」ところだ。泥がつこうが、雨や汗で濡れようが、乾いてしまえば気にならない。汚れていることを忘れてしまうくらい。雨や汗で濡れて張りつくことを想定の範囲ないとしていれば良いこと。だから汗だくになるようなランニングやレースではもちろん履かないし、どちらかというとわたしにとってはリラックスウエアの位置付けかもしれない。恋人っぽくいうなら、心穏やかにいたい時にそばにいてほしい、落ち着ける存在といったところか(はずかしい)。


速乾性や肌離れなんて昨今の進化著しいアウトドアウエアの機能としては当然かもしれないけれど、それがこのデザインとカラーで叶っていることこそが、わたしの暮らしのなかで出番が多い理由だと思う。絶妙なシルエット、低身長族にはありがたい裾の太めゴム、リラックスしたいときに腰紐を閉めなくてもずり落ちない腰のリブ、細部にこだわりはあるものの余計な装飾やポケットがないシンプルさ。仕事柄、かなりたくさんのロングパンツを持っているほうだ。でも間違いなくこれは一軍選手。

 365 日のうち“私服”を着られる機会は少なく、一週間のうち6.5日くらいはアウトドアウエア(=ほぼ仕事着)かもしれない。もはや私服がアウトドアウエアになってしまっている。だからといって毎日“アウトドアコーデ”はいやだ。そんなスポーティーに全振りしたくないわたしにとっての大事なアイテムのひとつだ。オシャレをね、捨てたくないんだ。あちこちさんざん連れ回されてすっかりお疲れの様子の旅の供、まだまだよろしく頼みますよ。


Profile

Emma Nakajimaさん

ライター

三度の飯も山も好き。テント泊縦走から雪山登山まで1年を通じて山に通う。 趣味が高じてライターとなり、登山やキャンプなどのアウトドアアクティビティ、トレイルランニングなどの取材・執筆をメインに、国内外の長距離レースにも出場している。 ヨーロッパやアジアを中心とした海外トレッキングをはじめ、国内のロングトレイルも踏破。トレイルランニングレースは取材を兼ねて海外の100km以上のレースに出ることが多い。特技は走りながら取材すること。