ノックして道をひらく。
学ぶこと。走ること。楽しむこと。

アナウンサー/ランナー 杉江奏子さん

杉江さんは、軽やかに新しいチャレンジをする人です。そしていったん取り組んだならばそれらと深く関わりあいます。仕事では声に愛情をのせたり、趣味ではボストンマラソンの出場資格を得たり。関わり、学び、そしてそれらを周りに還元します。

常に楽しんでいる感じ。杉江さんの周りには彼女に会いたくていつも人が集まります。


走ることへの取り組み。声の力。

杉江さんには、1年に1つ何か新しいことにチャレンジする、という取り組みがあります。3年前に思いついたのがホノルルマラソンの出場で、そこからランニングとの付き合いが始まりました。やるからには納得できる結果を求めたいということで練習を始め、ホノルルマラソンでは完走を果たします。タイムは5時間5分、もう少し速く走れたのではという思いが残りました。そこからタイムを縮められるよう走り続け、現在はサブ3.5(フルマラソンを3時間30分以内)を目指しています。箱根の5区と6区(上って下る坂道を41km超)を続けて走る、などのストイックな練習もしていて、現在は出場にタイム基準のあるボストンマラソンを目指しています(非公式には基準タイムを突破したとのこと)。

フルマラソンでのパターンを聞いたところ、「15キロくらいでエンジンかかって楽しくなって飛ばしてしまいます。35キロくらいで、ちょっとしんどくなってきた辺りで積極的に沿道の人に声援のお礼を伝えていきます。」とのことでした。声を出すことが自身の力になる、それでペースを落とすことなくゴールまで走りきれる、と話します。「人の声援、声、って大事なことだなと、声を出すことで元気になると思います。」

声の力を信じるということ、アナウンサーを仕事にしている杉江さんだからこそより強く声の力を理解しているのだと思います。


声に愛情をのせる仕事

J-WAVEのニュースルームに勤務する杉江さん。現在はラジオでニュースを読むのが仕事です。杉江さんの声は、芯をしっかりと持ちながら優しく耳に心地よい、自身が毎日を楽しんでいるのもなんとなく伝わってくる、という感じでしょうか。

小さい頃から話すことが得意だという思いがあったとのこと。中学生の時、綺麗な衣装を着てテレビに出たいというシンプルな理由でアナウンサーになりたいと思い始め、高校生になりNHKの放送コンクールの全国大会にも出場するようになり、次第にのめりこむように。大学になり放送研究会に迷わず入部。当初の思いがかなってアナウンサーになりました。

きっかけは軽い気持ちから、でも実際にアナウンサーになってみると、人の死に接することも多く、伝える方も命がけで取り組む必要があると、早いタイミングで学ばせてもらう出来事があったとのことです。軽々しく言葉を使ってはいけない。言葉に強い責任を持つ必要があると。

「この仕事の面白みは、正解がないこと。その時々の自分を表現することだと思います。正解がないからこそ、たとえわずかでもよりよいものを目指して努力を続けることが楽しいです。」

そんな中で何が正解と思えるかということに関して、杉江さんはこう答えます「話し手に思いやりがあるかどうかが大切だと思います。見えないけれども、相手を想像できるかが大切」「正しく読む、ということも大事だけど私はそこにもう少し“人”を入れたいです。」

技術的なことを話されるのかと思っていたところまず話し手の気持ちの話がでて、こちらも心が動きました。私たちがTANNUKIのウェアを企画しているときも同じで、作り手に周りへの思い、着てくれる人への思い、があるかどうかで製品の完成度も変わると思っています。杉江さんは声に愛情をのせてニュースを語ります。


ノックして扉を開く

杉江さんには大事にしている言葉があります。【人生の試練に遭遇した時、乗り越えられない厚い壁、自分には無理だと思うのではなく、目の前にあるのは、大きな扉だと思え!まずはノック!扉を開こう!】前半部分は誰かの言葉だったかもしれない、ということで調べてみたところ、19世紀アメリカ合衆国の思想家で詩人、哲学者である、Ralph Waldo Emerson(ラルフ・ワルド・エマーソン)による詩がもとにあるのではと思われます。彼の【Every wall is a door.】とは【すべての壁は扉である】というような意味で、壁だと思って、乗り越えられないと思っていたものでも、あきらめずに相対すれば扉として開く、という意味だと思います。そこに杉江さんは“ノックする”という新たな価値を付け加えます。扉か壁かはわからないけど、何はともあれノックしてみる、これは杉江さんの好奇心や周りとのかかわり方をよく示しています。ノックはいろんな可能性だと杉江さんは言います。どんな難しい試練にあっても何かやれることがあるのではと色々試す。ノックして道を切り開く、それが自分の生き方である、と話してくれました。


「誰かと一緒に旅に出ると、とても楽しかったといわれることがある、それはピンチも楽しむ自分のマインドのせいではないか」と杉江さんは言います。今回お話してみて、その雰囲気がとてもよくわかりました。何でも楽しむ人、ピンチになったときに頼りになる人、一緒に扉をノックしてくれる人、杉江さんはそういう存在であると感じます。

挑戦してみてひとつひとつの事柄から学ぶ。しんどくても正面から向き合って乗り越える。だからそこに精神の厚みが出て声の深みにつながっていく、杉江さんはそういう存在であると感じました。


Profile

杉江 奏子さん

アナウンサー / ランナー

宮城県出身 元テレビ信州アナウンサー 日本テレビ系アナウンス新人賞受賞 退社後はフリーとして司会や企業のプレス発表、ハイブランドのイベントMCなど。 J-wave「 ロハストーク」ナビゲーターやCMなどラジオ番組での活躍の幅を広げ、J-waveニュースルームアナウンサーを現在も務める。